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執筆者の写真yasuyo

テーブルの上が海になる


6月初旬に子猫が我が家にやってきました。名前は梅(うめ)です。


名前の由来は梅の実がなる時期に来たというのが綺麗で作家らしいのですが、そうではなく池波正太郎の剣客商売の美冬に似ているところから大路恵美➡小梅➡梅となったのが一番の由来です。子どもたちが大きくなり私たち夫婦の余った母性と父性を猫にそそぐことで家族のバランスを保っているようなところがあります。


4月から腰を据えて制作をすると決めたことで小刻みに区切っていた時間から静かに流れるような時間へと移り変わりました。創作も心の赴くままに彫りたい時に彫り、昼寝をし、花をいじり、ご近所の方とお話をしたり、パンをこねたり。結婚、出産、育児、教育など環境と体と心の変化が激しい時期には家族との大事な時間を優先してきましたが、それらの時間は木彫り作家である前に私の核となる大切な時間でした。先祖から親へ、親から私へと手渡されてきた宝物のようなものであり、自然の摂理に抗わずただ素直な気持ちだったようにも思います。そして子たちへと手渡し手が離れ漸く私は一人に。もちろん夫も子供も家に一緒にいますが、そういうことではなく一個人となったのです。


どこにも属さず自由に空想と創作をこれから先もしていこうと決めていたのに、いざとなるとやっぱり寂しい。せめて猫を小舟に乗せて一緒におしゃべりしたり、慰めてもらったりしながら静かな創作の海をゆっくりと回遊したい。



一人になるということ。


それはとても簡単で難しいことでした。







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