昨日、制作していて不思議なほど早く出来上がりました。あまりに早く出来上がってしまったので、考え込んでしまいました。
彫る前に、スケッチを何度も繰り返す作品と、何となく見切り発車するように彫り始めてしまう作品があります。
何度もスケッチをしてイメージが固まった(イメージは元々固まっていてスケッチで細部やポーズを決めるときもある)状態で彫り始めた時は、頭の中にあるイメージを具現化していくような作業。一方の、何となく彫り始める時は本当に不思議なのですがイメージが何となくあってまぁこれでいこうかぁ~という曖昧なスタンスで彫り始めて、彫ってはみたものの正解が分からず、完成した作品としばらくの間は睨めっこをするはめになります。
どうすればよかったのかな。
次の作品の制作に移りながらも、頭の片隅では睨めっこが続きます。短い期間では2,3日ですが長くて数年間工房のあちこちにガラクタのように転がっていたりもします。
先日、NHKの歴史探偵で岡本太郎さんの特集がありました。その中で興味深かった事がありました。行方不明になっていた作品がある絵の下に隠されていたことがX線分析をして分かり関係者は信じられないという様子でした。でも、私からすると、太郎さんは気に入らなかったんだろうなと思うのです。他人からすると高値がつくかもしれない絵の上に絵を描くなんて!!と感じるのかもしれませんが、本人はこの作品はいくらぐらいするぞーと思いながら絵を描いている訳ではないはずです。描きなおしたことで漸く納得できたのではないでしょうか。
どちらが良いという話ではないのですが、イメージが曖昧に彫り始めた作品は一時はガラクタのようにされる運命もありますが、睨めっこが続いた先に自分では想像できない結果をもたらしてくれる場合も多々あります。
左の象さんはある写真からイメージして作りましたので、象の一番のポイントである長い鼻が向こう側にクルンと持ち上がっていて、象らしさに欠ける残念な作品になってしまいました。案の定しばらく睨めっこしていましたが何かの拍子に象さんを落としてしまい、鼻の部分がポッキリ折れてしまいました。ボンドで付けて修復してみましたが元があまり気に入っていなかったので展示作品からは外そうと思っていました。すると不思議なのですが少し気持ちが楽になったのか、ダメもとで頭部分から切り落として作りなおそうと思い直すようになりました。私はやっぱり象の鼻を長くしたかったのですね。木目も縦になるので折れにくいし作品としても安心して展示できます。そして何より作り変えてから象に物語を感じます。
迷いながら彫るということは、あっちやこっちやと森の中を迷いながいながら目的地にやっと到着できた時のように濃密な時間がその作品にぎゅっと詰まることでもあるように思えますね。
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